はじめに ヴァイオリン ビオラ チェロ  コントラバス コンセプト
.
The bows
Background
Distribution
お客様の声
About us
Service
Deutsche Seiten
English Pages

Arcusの理念

Arcusの弓の開発にあたってまず取り組まなければならないことがありました。それは、演奏技術に関するある問題の解決でした。例えば、モーツアルトのヴァイオリン協奏曲ト長調の冒頭では、和音を強く勢いよく弾かなくてはなりません。スティックが弦に触れないようにするためには、比較的強い弓を使用する場合でも、弓の張りをいつもより少し強くする必要があります。しかし、その数小節あとに続く、澄んだ軽いスピッカートを弾くには、このように強く張った弓で演奏するのは非常に困難になります。

最高の弓づくりをめざす上でも同じ様な問題が生じます。目の詰まった重い木から作られた弓は透明感のある美しい音を生み出します。しかしこのような弓は、弓先が重くなって弾きにくくならないようかなり細くカットされているので、高い弾力性は得られません。一方、軽いフェルナンブーコで作った太目のスティックは、弾力性はありますが豊かな音は得られず、雑音も多くなりがちです。この問題を解決するには理想的な木材が必要になりますが、ここ100年間ほどは入手不可能な状態が続いています。このような木から作った弓は需要が高いため、ほとんどの演奏者にとって手の届かない価格になっています。

木製弓が壊れやすいということもこの問題を大きくしています。最高級のオールド弓のほとんどは破損してしまったり磨耗したりして、はるか昔に失われています。

弦にスティックが接触してしまうという問題は、製作上で案外簡単に解決できます。スティックを反りが少なく剛性・弾力性が高いものにすればよいのです。こうすれば、演奏時の弓毛の張りをソフトで軽い木製弓と同レベルにしても問題ありません。弓毛の柔軟性を保ちながら、非常に強い圧力で弾いてもスティックと弦が接触することなく、高い演奏性能が得られます。このような弓は、薄いスチールかチタンのパイプなどを使用して作ることができます。実際、100年以上前にヴィヨーム工房でこのような弓が作られたことがあります。

あとは、よい音がでることだけを考えればいいのです。少なくとも最高品質のフェルナンブーコと同程度の共鳴性をもつ素材を選ばなければなりません。問題は、最高品質のフェルナンブーコは音の伝達速度が毎秒約6,000 mもあるということです。上質のスプルースで作られた弦楽器の表板ならほぼ同じ共鳴性がありますが、弓作りには適しません。金属のうちで最も共鳴性の高いスチールやアルミニウムでも毎秒5,100 mです。純粋なガラスでもせいぜい毎秒5,500 mです。過去200年にわたり、弓づくりや弦楽器に適した素材としてフェルナンブーコやスプルースが利用されてきたのは不思議なことではないのです。

以上の問題を解決する唯一の方法が工業用素材の「新星」、カーボンファイバーの利用なのです。その並はずれた性質から「ダイヤモンドファイバー」とさえ呼ばれるこの素材は、ダイヤモンドと同じように100%炭素でできています。アルミニウムを下回るほどの軽さでありながら、強度と剛性(弾力性)はスチールより優れています。その非常に細い繊維状のカーボンファイバーを布のように織り上げ、エポキシ樹脂などを仕上げに用いて任意の素材を合成します。テーブルクロスの上に糊をつけてしまった経験があれば想像できるでしょう。このカーボンファイバーを使用したArcus社のスティックは毎秒7,300 mという共鳴性を実現しました。

きわめて軽量でありながら非常に優れた弾力性や響きをもっているのは、スティックが中空構造になっているからなのです。

弊社の弓の壁厚は約1 mmです。良質のフェルナンブーコと比較しても、その半分の重量で2倍の弾力性を有します。

弾力性

(Holzbogen:  木製弓)

ここでは、剛性、柔軟性、強度、弾力性そして硬度の定義についてご説明します。

音を立てて流れる急流に低くかかっている細い橋を想像してみてください。肩に重い袋を背負った粉屋がその橋を渡ると、橋の板は少したわみます。このたわみが「柔軟性」と呼ばれるものです。一方この「柔軟性」と対極にあるのが木の「弾力性」であり、粉屋の足が水に浸かるのを防いでいます。橋に軟らかい木が使われている場合は、その「硬度」の低さにより、後ろを歩く粉屋の妻のハイヒールの跡が残るかもしれません。重い荷物を背負った粉屋が3人同時に渡れば、その橋は壊れるかもしれません。これは、荷物の重さが橋の「強度」を越えてしまったからです。

木のかわりにカーボンファイバー製のパイプで同じ橋を作ったとしたら、質量は半分、「剛性」は2倍になり、たわみは2分の1に減少します。ハイヒールの跡を残すこともなく、また、重い荷物を担いだ粉屋が12人橋の上に立ったとしても壊れることはないでしょう。

: カーボンファイバー複合材

カーボンファイバー複合材の剛性、硬度および強度は、その中に含まれるカーボンファイバーと樹脂の割合に大きく左右されます。樹脂の割合が低ければ低いほど、その特性は上がります。弊社の弓のように樹脂の割合を約30%というぎりぎりの値まで減少させるには、非常に複雑な技術が必要です。弊社では複合材を高温高圧下で硬化させますが、それに耐えうる品質のよい機械や鋳型を使用しています。この製造過程を省略してしまうと樹脂の割合を高くせざるをえなくなるので、弓が弱くなったり重くなったりします。

重量とバランス

弓の重量(質量)について、「60 g」がよいと昔から言われています。事実、多くの演奏家がそう信じています。しかし実際は、軽い弓の方がスピッカートや移弦が容易で快適な演奏が可能になり、よりよい音を奏でることができるのです。軽量の弓は動きがよいだけでなく、容易かつ迅速に振動するためレスポンスが向上し、音量も豊かになります。

では、なぜ「適正重量」という概念が生まれたのでしょうか。それはおそらく、フェルナンブーコでは経験上60 gの弓が最も演奏性能がよいからでしょう。55 gになると大抵、スティックが細いために弱すぎる、つまり弾力性が低すぎるか、フロッグ部分との釣り合いがとれずに弓先が重くなってしまうかのどちらかです。

このように、フェルナンブーコで製作された弓の場合は「適正重量」という考え方に根拠があるようです。しかし、並外れてすばらしい木材から作られた上質のオールド弓には、比較的軽量ながらきわめて高い弾力性を持つものがあることも確かです。ソリスト達がこのように強くて軽い弓を追い求めるのは当然でしょう。

弊社は独自の製造技術により、弓製作の分野に新しい風を吹き込みました。中空構造にしたスティックは軽量であるにもかかわらず、高い強度と弾力性を備えています。また、弓のバランスはきわめて重要になりますが、弊社のような軽い弓では、重心が今までよりも少し弓先寄りにあるのが理想的であることがわかりました。これにより、最高級の木製弓と同じような感覚ながら、さらに機敏さと安定性に優れた演奏が可能になります。

トップ